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二度目の絶頂を迎えると、途端に冷静になってしまった。
浴室内にこもる、雄の臭いに不快感が増していく。
信じられない。‥‥‥付き合ってもいないのに、なんて真似をしやがるのだ。
「西園寺さん。‥‥‥あなた、本当にサイテーな人ですね」
彼の顔をじっと見上げながら、にっこりと微笑んで言ってやった。
すると西園寺さんは情けなく眉尻を下げ、心底申し訳なさそうに言った。
「ごめんね、陸斗くん。
俺達の初夜本番はもっとちゃんと計画的に、素敵な思い出が作れるように頑張‥‥‥」
「ロマンチックさが足りないとか、そういう話じゃありませんから」
あまりにも的外れな謝罪の言葉に苛立ち、彼が言い終わるより早く、ピシャリと言い捨てた。
まだふらつきながらも彼の鍛え上げられた逞しい体から身を離し、床にぶちまけられたままになっていた精液をシャワーで流した。
西園寺さんは名残惜しそうに僕の事をまた抱き締めようとしたけれど、それは笑顔で拒絶してやった。
しかしこの時になるともう深夜の1時近くなっていたため、渋々ではあったけれど西園寺さんの事を自宅に泊めてあげた。
すると彼は調子にのって、同じ布団で寝たいと訴えて来たけれど、それは全力で却下しておいた。
***
その日から西園寺さんは、年末に向けて仕事が立て込んでいるとかなんとかで、一週間ほど前からにこにこ弁当に姿を見せる機会がめっきり少なくなってしまった。
もしや冷たくし過ぎたせいだろうかとほんの少し不安になったけれど、そこでハタと気付く。
僕が不安に感じる必要なんて、あるか?いや、無い。
だって西園寺さんは僕にあんな真似をしたけれど、別に恋人でもなんでもない。
そう‥‥‥ただの、変態ストーカーなのだから。
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