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用意された皿を手に持ち、慣れた様子でスイーツを選んでいく少年。
「って、お兄さんって呼びにくいな。
名前、聞いても良い?
俺は、山田 太郎。山田でも、太郎でも、お好きにどうぞ」
やっぱり山田 太郎が、この子の名前なのか。
見た目の派手さに反して地味な印象を受けるその名にちょっと笑いそうになったけれど、本人はあまり好きではない様子だったからそれはなんとか我慢した。
「僕は、|高梨《たかなし》 陸斗だよ。
山田くん、改めてよろしくね」
笑顔で答えると、彼もまたニッと笑った。
二人で他愛もない会話を交わしながらの、楽しいスイーツタイム。
初対面の相手だと言うのに、山田くんがあまりにも人懐っこいためか、まるで緊張はしなかった。
そしていざ会計という段になり、また少しだけ迷いながらも、チケットは頂き物であり期限も今日までというのも本当なようだったから、素直にご馳走になる事にした。
「ご馳走様でした。
なんか、かえって申し訳なかったね」
僕の言葉に彼は少し困ったように笑い、答えた。
「いえ‥‥‥ここのホテルのオーナーの息子と知り合いで、実はアホみたいに大量にチケット貰ってて。
普段は友達を誘うんっすけど、皆にはさすがにもう飽きたって言われちゃって」
そう言って彼は、束状になったチケットを取り出した。
そちらは今日使用したモノとは異なり、真新しい感じだったから、持て余しているというのも嘘ではないのだろう。
なるほど。確かにこういうのって、たまに来るから楽しいし美味しいのかもしれない。
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