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「ぬいぐるみ、マジでありがと。  スッゲェ、大事にしますね」  ホクホク顔でぬいぐるみをリュックから取り出し、嬉しそうに笑う山田くん。  僕には妹しかいないけれど、もし弟がいたらこんな感じなのかも知れない。  そんな風に思い、僕まで嬉しくなってにへらと笑った。  家を出た時は不快感でいっぱいだったはずなのに、思いがけず楽しい一日になった。  しかし山田くんに別れの挨拶をして、そのまま解散という流れになりかけたところで、事態は急展開を迎える。  目の前のエレベーターのドアが開き西園寺さんと、先日写真を見せられた、知り合いの息子だという長髪の美少年が仲良く楽しそうに談笑しながら降りてきたのだ。  僕は山田くんに誘われ、ケーキを食べに訪れた。  だけどここって、本来は‥‥‥高級ホテルだよな?  僕には仕事が忙しいからと、話していた癖にこの男。  ‥‥‥こんな若い子にまで、手を出してやがったのか!!    一瞬のうちに状況を理解したから、にっこりと微笑んでやった。  見る間に変わる、西園寺さんの顔色。 「こんにちは、西園寺さん。  奇遇ですね」 「こんにちは。えっと‥‥‥陸斗くんは、どうしてここへ?」  まるで浮気が見付かった男のように、目に見えて狼狽える西園寺さん。  でもまぁ別に僕は、この人と付き合っているワケじゃないし?  高校生に僕にしたような事をしているのはちょっと問題だとは思うけれど、それでも僕には関係ない。  にこにこと笑ったまま、彼の問いに答えた。 「スイーツバイキングに、誘われたので。  とっても、美味しかったです。  西園寺さんもその子と、召し上がって行かれたら良いと思いますよ。  では僕は、失礼しますね」  ペコリと西園寺さんに向かい、一礼した。  そして山田くんの方を向き直り、再びお礼の言葉を口にしようとしたのだけれど。  ‥‥‥彼の顔を見て、思わず一歩後ずさった。 「‥‥‥()。俺はお前の事、信じてたのに。  てめぇ他の男にも、手を出してやがったのかよ?」  鬼のような形相でそう言うと山田くんは、拳を振り上げた。  え‥‥‥待って。二股じゃなくて、三股って事!?

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