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 西園寺さん、マジでサイテーだな。  ストーカーで変態なだけでなく、ショタコンで、三股男とか‥‥‥本当に、クズ過ぎる。  殴られても当然だなと思い、庇う事なく冷ややかな目を向けたまま渇いた半笑いを浮かべた。  しかし山田くんが殴ろうとしたのは西園寺さんではなく、なんと長髪の子の方だった。  だから慌てて止めに入ろうとしたのだけれど、少年は山田くんの拳を華麗に避けた上、そのまま彼のお尻を軽く蹴っ飛ばした。  そのため山田くんは無様にも、ホテルのツルツルした大理石か何かで出来た高級感溢れる床にスッテーンと、コントのお手本みたいに綺麗にうつ伏せに転んだ。 「神宮寺(じんぐうじ)‥‥‥お前だけは、許さん!  三枚に下ろして、刻んで、その後更にミキサーにかけてミンチにしてやる!」  言っている内容は猟奇的なのに、そこはかとなく漂う残念感。 「何を勘違いしてんのか知らないけど、俺様の寵愛を一身に受けといて、いきなり殴り掛かろうとするとか‥‥‥。  本当に山田は、学ばねぇな?」    美しい絹糸のような肩の辺りまである長髪が、さらりと揺れる。  綺麗な口元を楽しそうに歪めて少年はそう言うとその場に屈み、まだ床に倒れたままの山田くんのお尻を、今度はぺちんと叩いた。  ‥‥‥痛くは無さそうだけれど、これは屈辱的過ぎる。  しかし僕はここで、ようやく事態を正しく把握した。  金持ちというのは名字に『寺』とかがつく、三文字のモノが多いんだろうか?  山田くんがキレているのは西園寺さんにではなく、この綺麗な少年‥‥‥神宮寺って子に対してなのだと。  まさかの、寺違い(・・・)。   「すみません、西園寺さん。  今日はここで、失礼します。  この馬鹿猫を、しつけ直さないといけないみたいなので」  にこやかに話しながら、長髪の少年は山田くんを上に向かせ、ネクタイを引っ張って無理矢理起き上がらせた。  何、この子。‥‥‥怖い。

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