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***    いざ車に乗るぞという段になり、ふと気付いた。  これまでは気にした事なんて無かったけれど、運転するのは当然秘書の、二見さんなワケで。  そうすると自動的に僕と西園寺さんは、後部座席に並んで座る事になる。    これまでも何度かこのパターンはあったけれど、先日のあの夜(・・・)以降は初めてで。  どうしようと少しだけ悩み掛けたタイミングで西園寺さんは、当たり前みたいな顔をして運転席に座る二見さんの、後ろの席のドアを開いた。    そして僕が車に乗り込むと、西園寺さんはこれまた当然みたいな感じで、僕の座る隣の席へ。  ‥‥‥やっぱり、そうなりますよね。  ハハハ、と渇いた笑いが溢れた。  でもまぁ僕は今日、送って貰う身だ。  それにこの席並びは嫌だと言うときっと、僕が妙に意識し過ぎているとバレてしまうに違いない。 「はぁ‥‥‥本物の、陸斗くんだ」  うっとりと夢心地といった様子でそう呟き、僕の手をそっと握ろうとする西園寺さん。  だから僕はにっこりと微笑み、両方の手をダウンジャケットのポケットに仕舞った。 「本当に、気持ちが悪い人ですね。  本物以外に、僕が何処かにいるみたいに言わないで下さい」  自然と漏れ出た、ため息。  すると西園寺さんは真剣な表情で、僕の瞳をじっと覗き込み言った。 「何度か、夢とか幻覚を見たよ。  あとあまりにも寂しくて、以前撮らせて貰った君の動画を見‥‥‥」  前半部分の発言も変態じみているし、夢に勝手に見るのはやめて欲しいと先日もきちんとお伝えしたが、今回問題なのはそこではない。 「は?僕の、動画って‥‥‥。  そんなの、撮らせて無いですよね?  まさか、盗撮!?」

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