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「私が知っているのは、以上です。  陸斗さん、ご満足頂けましたか?」  いつもみたいににっこりと、穏やかに微笑んで二見さんは聞いた。  だからそれに、僕も満面の笑みで答えた。 「ありがとうございます、二見さん。  あのね、西園寺さん?  色々とすっ飛ばし過ぎなんですよ、あなたは。  ‥‥‥本当に、迷惑」  しょんぼりと、まるで捨てられた子犬みたいに瞳を潤ませ僕を見上げる西園寺さん。  そして僕は彼のこの、子供みたいな表情に弱い。 「はぁ‥‥‥イブの夜は、空けておきますね。  たぶん既にキャンセルしたら料金が発生してしまうと思うので、変な真似をしないのであれば泊まりでも良いですよ」  仏頂面で、そう告げた。  すると西園寺さんは、キラキラと瞳を輝かせ、声を弾ませた。   「えっと‥‥‥と言うことは。  俺のプロポーズ、受けてくれるって事!?」 「ち・が・い・ま・す!  その前にあなたは、僕に言うべき事があるでしょう?」  苛立ちながら、今度は笑顔で答えた。  そう‥‥‥僕はこの人に、好きだの愛してるだのとは言われても、付き合って欲しいという肝心な言葉を言われていないのだ。 「そもそもこの日本では、パートナーシップ制度はあっても、男同士の結婚は認められてません。  ホテルは仕方がないから、キャンセルしなくても良いというだけの話です。  ただしその、フラッシュモブだのなんだのは、絶対に止めてください。  さすがに、恥ずか死ぬ‥‥‥」  ここまで言ってもきっと、まだ伝わっていないのだろう。  西園寺さんは何やら複雑な表情を浮かべたものの、それから気持ちを切り替えたのか、とりあえずはイブの僕の予定を確保出来た事にホッとした様子で嬉しそうに笑った。

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