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『大丈夫ですけど』  たった七文字の、愛想も何もない返信。  もう少し言いようがあるだろうと自分でも思うけれど、こういう返し方しか出来ないから嫌になる。  だけど僕の塩対応にもすっかり慣れているのか、西園寺さんはいつも、特に気にする様子もないけれど。 『もう君の、家の前に居るから。  陸斗くん、降りてきて』  心臓が、ドクンと跳ねる。  ストーカーにこんな時間に家まで押し掛けられて、本来なら迷惑だと思わなければいけないはずなのに。  ダウンジャケットを手に取り、部屋着の上から羽織ると、僕は慌てて部屋から駆け出した。 「陸斗、どこか出掛けるの?」  玄関で靴を履こうとしたタイミングで、母親から声を掛けられた。  だけど何となく恥ずかしかったから、コンビニに行ってジュースを買って来るだけだと、咄嗟に嘘を吐いてしまった。  そんな必要なんて、何処にもないはずなのに。  ドアを開け、外に出るとそこには、いつものスーツ姿ではなく無地の深緑色のニットにジーンズなんていう格好の、完全にオフモードらしき西園寺さんの姿。  とはいえその服も、僕がいつも着ているモノとはきっと桁が違う、お高いやつなのだろう。  シンプルな私服だというのに、いつもとは異なるラフな装いに、またしてもドキリとさせられた。  ‥‥‥無駄に。 「陸斗くん、こんばんは。  とりあえず寒いし、乗って!」  満面の笑みを浮かべて言われ、次に会えたら連投されるDMについて文句のひとつも言ってやろうとさっきまでは思っていたのに、出鼻を挫かれてしまった。  いそいそと助手席のドアを、毎度の如く開けてくれる彼。  僕は小さくため息を吐き、笑顔で答えた。 「こんばんは。ありがとうございます、西園寺さん。  だけど妙な真似をしたら、ぶん殴りますからね」

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