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「美味しい物を、美味しいと思える量だけで良いです。  分かりましたね?」  西園寺さんの鼻先に指先を突き立てての、お説教。  いつもはちゃんと仕事をしているであろう西園寺さんが、僕みたいな年下の男に叱られてシュンと項垂れる様に、ますます困惑した様子の店長さん。 「ごめんね、陸斗くん。  ‥‥‥分かった、そうだよね」  さっきに続き、またしても僕の機嫌を損ねてしまったものだから、さすがに本気で反省したのか涙目になる西園寺さん。  ‥‥‥本当に、勘弁して欲しい。 「分かってくれれば、良いです。  それにその方が、次に一緒に来た時に選ぶ楽しみが増えるでしょう?」  にっこりと微笑み、最後の言葉は背伸びをして、彼にだけ聞こえるよう耳元でこっそり囁くと、西園寺さんは途端に元気を取り戻してそうだねと嬉しそうに笑った。   ‥‥‥本当に面倒臭く、そして本当にチョロい男である。  店長さんにはもう気を遣わないで欲しいとお願いをしてから、空いている席に向かい合って腰を下ろした。 「どれも、美味しそうですね。  たくさんあり過ぎて、迷っちゃうなぁ……」  メニュー表と睨めっこをしながら、何が良いか決めかねていたら、彼はにっこりと笑って写真を指差した。 「そうだねぇ。  陸斗くんが好きそうなモノだと、この海老ドリアとかはどうかな?  確か妹の莉緒ちゃんが海老嫌いだから、いつも家では作れないんだよね?」 「あー‥‥‥確かに。  じゃあそれに、しようかな。  ‥‥‥って、待って下さい。  なんでそんな事まで、知ってるんですか!?」  あまりにもどうでもよい些細な情報まで把握されているという事に、戦慄する僕。  だけど彼は不思議そうに首を傾げ、質問に質問を返してきた。 「え?なんでって‥‥‥。  愛する君の家族の事だもの、当たり前だろう?」

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