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 今日は土曜日な上、クリスマス・イブという事もあり、街はカップル達で溢れ返っている。  そのためスーツを着込み、男同士でうろついている人間なんて、かなり稀有な存在と言えよう。    幸い僕は一緒にバナナジュースを販売するお店の列に並びたいという西園寺さんをなだめすかし、マテが出来たらご褒美をあげますという言葉でなんとか車中で待機させる事に成功した。    ちょうど良い。クリスマス・プレゼントとして元々考えていた例のブツ(・・・・)を、この機会に先に渡してしまおう。  自分のために、プレゼントをふたつも用意してくれたのかと喜ばれるのも少しだけ面倒臭い。  なので彼がスーツだのなんだのを僕に先に渡してくれたのと同じ戦法を取り、あくまでもオマケなのだと思わせる事が大切である。  彼のために心を込めて、実は前日から仕込んでいましただなんて知られたら、確実に面倒な事になるに決まっている。  だから絶対に、バレるワケにはいかないのだ。 「ちゃんと、待っててくれたんですね。  えらい、えらい」  運転席側の窓を開けて貰い、ジュースを手渡すと、いつも僕がされるみたいに西園寺さんの頭をくしゃりと撫でた。  硬質で真っ黒な僕の直毛とはまるで異なる、柔らかくて絹糸みたいな手触りの癖っ毛。  それがあまりに心地よかったから、撫で続けること数秒。   「お帰りなさい、陸斗くん。  ……ご褒美はぁ?」  運転席に座る彼と、車の外に立ったままの僕。  いつも見上げてばかりだった西園寺さんの、下からの視線の破壊力がすごい。  ……やはり無駄に、顔が良い。

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