84 / 111
84
「えっと……俺と君の、関係だよね?」
困惑顔で、聞き返された。
だから大きくブンと頷き、西園寺さんの事をじっと見下ろした。
「……ストーカーと、その被害者?」
……この人一応自分が、金にモノを言わせて犯罪紛いのストーカー行為を繰り返しているという自覚はあったんだな。
確かに、間違えてはいない。
間違えてはいないけれど、今求めているのはそういう答えではないのだ。
「ブッブー!合ってるけど、違います」
にっこりと微笑み、答えた。
本気で考えているのか、彼の眉間に深いシワが寄せられた。
「友達でもないし、家族でもないし……。
陸斗くんは俺の大切な想い人ではあるけれど、君は俺の事を好きなワケではないし。
うーん……難しいな」
僕が西園寺さんの事を、好きじゃない?
好きじゃなかったらキスなんてしないし、こんな所にノコノコ付いてくるはずがないじゃないか。
……僕の事をあれだけ調べあげている癖に、何故肝心の僕の気持ちが分からないんだよ。
真剣な表情のまま、ああでもない、こうでもないと思い悩む西園寺さん。
……本当に、ポンコツ過ぎる。
「もう、良いです。
これは、宿題にしておきますね。
そろそろ予約して頂いた、ディナーの時間では?」
壁に掛けられた時計を指差し、体を起こそうとした。
なのに手首を掴まれ、そのまま強くソファーの上で抱き締められてしまった。
「君のその表情を見て、もうひとつだけ、浮かんだ答えがあるんだけど」
真っ直ぐに瞳を見つめられただけで、まるで心臓をぎゅっと鷲掴みにされたみたいに苦しくなる。
自分から聞いた癖に、その答えを今聞くと、とてもじゃないけれど落ち着いて食事なんて味わえそうに無かった。
だから彼から視線をそらし、わざとおどけた口調で答えた。
「その答えは、後で聞きますってば。
……こんな高級なホテルのディナーなんて初めてだから、ちょっと緊張しちゃうなぁ!」
ともだちにシェアしよう!