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「はぁ……本当に、夢みたいだ。  愛する陸斗くんとこうして、イブの夜を二人きりで過ごせるだなんて」  ほんのりと頬を染め、ワイングラス片手に幸せそうに笑う西園寺さん。  僕はオレンジジュースの入ったグラスを手に取り、笑顔で答えた。 「残念ながら、現実だと思います。  ちなみに二人きりと言いながらここはホテルのレストランですから、他にお客さんも店員さんも居ますけどね」  アルコールを一緒に頼めたら良いのだろうけれど、残念ながら僕は未成年だ。  別にお酒が飲みたいワケではないが、僕の好物であるオレンジジュースを彼が勝手に頼んだ事が、何となく子供扱いされたみたいで悔しいし情けない。  烏龍茶やスパークリングウォーターなんかより、こっちの方が確かに僕は好きだけれど。  テーブルに並べられた、たくさんのカトラリー。  確か外側から順番に、と以前何処かで聞いたことがある気がするけれど、いまいち自信がない。  正直こんなお店にこれまで来た事がなかったから、その落ち着いた上品な雰囲気に少し戸惑っていたら、ウェイターのお兄さんが当たり前みたいな顔をして二人分のお箸を用意してくれた。  きっと僕に恥をかかせないために、こっそり西園寺さんが頼んでくれたのだろう。 「……ありがとうございます、西園寺さん」  お礼の言葉を口にしたけれど、彼は悪戯っぽく笑い、言ってくれた。 「ナイフとかフォークより、箸の方が使いやすくて好きなんだよね。  だから陸斗くんのも、ついでにお願いしちゃった」  ……そんなの、絶対嘘だ。  だけどこういう気遣いがスマートに出来る辺り、やはり彼は優しくて素敵な大人だなって思う。   いつもの変態加減や過去の数々の奇行を思えばトータルでは、残念ながら結局マイナス評価になってしまうような気がしないでもないけれど。

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