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「うん、痛い(いひゃい)……」  一瞬のうちに絶望的なまでに悪くなった、彼の滑舌。  僕が手を離すと、西園寺さんはそのままバタンとテーブルに突っ伏した。  静かなレストランに響く、ゴンという鈍い音。  スーツからちらりと覗く彼の首元が、あっという間に朱に染まる。 「ようやくご理解、頂けたようで。  それで、西園寺さん。どうされます?  僕と付き合うか、それともこのままストーカーとその被害者の関係を継続するか」  理解はしたようだが、一向に返事がない。  それに焦れての、更なる催促。 「5秒以内に、返事して下さい。  それ以降は、さっきのは無効です。  5、4、3……」 「付き合います!  お付き合い、させて下さい!」  ガバッと顔を上げた西園寺さんの額は、さっきテーブルにぶつけたせいで、びっくりするくらい赤くなっている。 「では、よろしくお願いします。  じゃあとりあえず、食べちゃいましょうか?  ……これ以上悪目立ちしたくないので、早く部屋に戻りたい」  痛そうなおでこにそっと手をやり、クスクスと笑いながら撫でると、彼は心底嬉しそうに笑った。  彼のこういう素直なところ、可愛くて好きだなって思う。  しかし次に彼が放った言葉のせいで、一瞬にして真顔になった。 「そうだね、そうしよう。  早く俺と、二人きりになりたいんだよね?嬉しいよ」 「そんな事、一言も僕は言っていません。  本気で恥ずかしいから、言っているんですよ?  西園寺さん、気持ちが悪過ぎます。  ……お願いだから、もう黙って」  そこからは二人、夜景と会話を楽しみながら、豪華なディナーとバースディケーキをいそいそと平らげた。

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