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ホテルのスイートルームに戻り、部家のドアを閉めるなり少し荒々しく肩を掴まれたと思ったら、壁際へと追い込まれた。
そして彼は無言のまま僕の顎先に手をやり、ちょっと強引に上を向かせると、抵抗する間もなくキスで唇を塞いだ。
突然の事に驚きはしたけれど、全く不快ではなかった。
それどころかむしろ僕自身気付かなかっただけで、こうやってまた彼に触れて欲しかったのかも知れないとさえ感じる。
与え合うように、奪い合うように。
お互いを求め、貪るみたいに口付けを交わす。
『付き合っていないから』『西園寺さんは、単なるストーカーだから』といった言い訳が必要無くなった今、拒絶する理由も無かったし、彼の事がもっと欲しくてたまらなかった。
だから夢中で、キスを繰り返していたのだけれど。
彼の大きな手のひらが当たり前みたいに僕のネクタイをほどこうとしてきたものだから、慌てて軽くペチンと叩 き落とした。
「陸斗くん、駄目?」
叱られた子犬みたいな表情で、じっと僕の事を見下ろす西園寺さん。
しかしその間も強く抱き締められたままだから、ドキドキし過ぎてこんなの心臓がもたない。
駄目……では無い気がする。
だけどまだ、スリッパに履き替えてすらいない現状なのだ。
……がっつき過ぎだろ、この人。
「あの!……せめてちゃんと室内に、入ってからにして下さい」
グッと彼の大きな体を、押し戻そうとしたのに。
履いていた靴は脱がされ、ポイと床に放り投げられたかと思うとそのまま、お姫様抱っこをされた状態でベッドへと連れて行かれた。
「西園寺さん……やっぱり少し、待って」
途端に恥ずかしくなり、反射的に彼から逃れようとする僕。
でも西園寺さんはそれを許す事無く、艶やかに笑った。
「ここなら、良いんだよね?
覚悟して、陸斗くん。
……もう今夜は、逃がしてあげないから」
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