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「陸斗くん、それは駄目。
可愛い声、ちゃんと俺に聞かせて?」
海外土産のチョコレートみたいに、ドロッドロに甘い声。
そのまま僕の指先は彼の唇に咥えられ、軽く噛まれた。
そのせいでますます恥ずかしさが増して、ぎゅっと目を閉じ、ブンブンとまた大きく首を横に振った。
「や……だ……!
西園寺さん、それやめて!」
震える声で、必死に訴える。
だけど彼は楽しそうに、ただクスリと笑った。
「それって、指を舐められる方?
それとも……こっち?」
カリ、と爪先でもう一度胸の先端を軽く引っ掻かれると、浴用椅子に座らされた体が大きく仰け反りそうになった。
でも背中は彼のもう一方の手でしっかりと支えられていたから、無様に転んだりはしなくて済んだけれど。
「ねぇ、答えてよ?陸斗くん。
じゃないと、分かんないよ?」
普段は呆れるぐらい優しい癖に、こういう行為の最中彼は、途端に意地が悪くなる。
……前回同じように弄ばれた時から、薄々気付いていた事ではあるが。
だけど僕はこういった、睦言や行為に慣れていなくて。
情けないくらい簡単に、彼の視線や指の動き、言葉ひとつに翻弄されてしまう。
「どっちも、やだ……!
それ、だって……」
「だって、なぁに?」
強く胸の頂を摘ままれ、転がされる。
たったそれだけの事で、体が、脳が、融かされていく。
「だって、気持ちい……」
思考力を完全に奪われ、快楽に拐われながら紡ぎ出した言葉は、自分でも驚くくらい淫らで。
西園寺さんは引いていないだろうかと、途端に不安になり、そっと目を開けた。
すると彼の嬉しそうな、満足そうな瞳と目が合ってまた恥ずかしくなった。
だからやっぱり、今のは無しでと言おうとしたのに。
……キスで荒々しく唇を塞がれ、その言葉は奪われた。
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