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 女の子とだってこれまで、唇と唇が軽く触れ合うだけの子供みたいなキスしか経験が無かったのだ。  しかもこれから僕は間違いなく、西園寺さんを抱くのではなく彼に抱かれる側。  女性とは違い、元々受け入れられるように体は作られていない。  これから二人が繋がる場所は、単なる排泄器官だ。  怖くないと言えば、嘘になる。  だけどこんなにも求められ、大好きな彼とひとつになれるのだと思うと、単純に嬉しかった。  だからコクンと頷き、恥ずかしかったけれど彼を受け入れるべく高くお尻を上げた。  ズルリと三本の指が、引き抜かれる感触。  それにすらも体は震え、彼を求めて下腹部がきゅんと収縮するのを感じた。  ……男である僕の体には子宮なんてモノ、存在しないはずなのに。  指先をティッシュで拭い、彼は僕から体を離した。  それがちょっと寂しかったけれど、離れていたのはきっと、時間にしたらほんのわずかな間だったんだろうと思う。  避妊具を装着した西園寺さんが、再び僕に覆い被さる。 「陸斗くん、挿れるよ。  だけど最初は、痛いかも。  ……ごめん」  彼だってもう、限界だろうに。  こんな風に気遣ってくれる西園寺さんの優しさが、嬉しかった。  だからコクンと頷き、その時を小さく震えながら待った。  三本の指とは比べ物にならないくらいの、圧迫感。  やはりそこはそういう風(・・・・・)には作られていないため、異物である西園寺さんを押し出そうとするみたいに拒絶し、簡単には受け入れられないようだった。  僕が本気で嫌がり、止めて欲しいと訴えたらきっと彼は、これ以上無理矢理関係を進めるような真似をしないだろう。  だけど、そうはしたくなかった。  だってこのまま付き合っていくのであれば、遅かれ早かれいずれは彼を受け入れる事になるだろうから。

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