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「知らないってば!
西園寺さん、そこやだ……。
やめて、ホントに無理ですって……!」
ポタポタと、頬を伝う涙。
だけどこれは嫌だからだとか、痛いからじゃなく、快楽から溢れたモノだった。
でもそれが余計に怖かったから、彼から逃れようと必死に身を捩る。
なのに彼はクスクスと楽しそうに笑い、僕が嫌だと言った箇所ばかり狙いすましたみたいに突き、抉った。
「可愛いなぁ、本当に。
……もっと、滅茶苦茶に啼かせたくなる」
更に深く、激しさを増す抽送。
信じられなかった。
最初は絶対に入らないと思ったのに、ローションを潤滑剤として、彼の熱くかたいモノが我が物顔で僕の中を行き来しているのが。
……そしてこんな恥ずかしい事をされているというのに、初めてにも関わらず乱され、獣みたいに喘ぎ声をあげている自分自身が。
「あ、そうだ。
良い事を、教えてあげる。
さっき君が不思議そうにしていた、媚薬入りローションの意味。
媚薬っていうのは初めてでも気持ち良くなれる、薬みたいなもんだよ」
その言葉に驚き、振り向こうとしたタイミングで、また激しく奥を抉られた。
「だからね、陸斗くん。
気持ち良くなっても、仕方ない。
……だって全部、あのローションのせいなんだから」
耳元で、綺麗な顔をした悪魔が囁いた。
……勝手に人の体に、なんてものを使いやがるのだ。
しかし怒りと同時に、何処かホッとしてもいた。
だって本当に、薬のせいだというならば。
……西園寺さんの言葉通り、初めてでもこんな風に気持ち良くなってしまっても仕方ないんじゃないか?
わずかに残っていた理性を、全部手放して。
……そこからは夢中で、与えられる刺激に溺れた。
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