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「気に入ってくれた?」
キラキラと瞳を輝かせ、ワクワクした様子で僕の顔を覗き込む西園寺さん。
だけど僕はこのアニメが好きだなんて、誰にも話した事がない。
それこそこっそり家で、妹の莉緒に付き合っているという体で録画したモノを二人で鑑賞する程度にしか興味がないフリをこれまでしてきたというのに。
……なのになんでこの人は、これを選んでるんだよ。
こわい!こわい!こわい!
「ヒィィィィィィィイッ!」
思わず手を滑らせそうになり、慌ててぎゅっと掴み直す。
……割れたら、洒落にならない。
しかもこれまでのプレゼント同様、これにも僕の名前がしっかりと刻まれている。
返品、交換不可なのは、誰の目から見ても明らかだ。
「ありがとうございます、西園寺さん。
でもやっぱりちょっと、怖いです。
……あと、滅茶苦茶気持ちが悪い」
震える声で、告げた。
だけどいつまでもこうして震えているワケにはいかないから、頂いたそのクリスタル製のフィギュアをサイドテーブルの上に置き、ベッドから降りると、自分のショルダーバッグに手を伸ばした。
そして中から事前に用意しておいたプレゼントの手編みのマフラーを取り出すと、彼に差し出した。
「メリークリスマス、西園寺さん。
気に入って貰えると、嬉しいです」
子供みたいに満面の笑みを浮かべ、いそいそと包みを開ける彼。
中身からマフラーを取り出すと、西園寺さんは感無量といった感じで、今にも泣き出しそうな声で言った。
「ありがとう、陸斗くん。
これって君の、手作りだよね?
……一生、大事にする。
これから365日、24時間身に付けさせて貰うよ!」
……本当にキモいな、この人。
だけど僕はにっこりと微笑み、答えた。
「気に入って頂けたようで、嬉しいです。
だけど日本には、四季というモノがあるんです。
なので使うのは、冬の時期だけにして下さいね」
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