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無駄な情熱②

 にっこりと微笑み、キラキラとまばゆい謎の光を放ちながら語る、西園寺さん。  ……全国放送でいったい何を言ってるんだ、この人は。  番組の最中も、例のイタリアンレストランの名前の由来等を、熱く語り続ける西園寺さん。  溢した牛乳の後処理をしながらも、もう既に止める事は出来ないと知りながら、この人に何を言われるか分かったもんじゃないからテレビの画面から目が離せない。  こんな素敵な御曹司に愛される人は幸せね、なんて母親は頬を薔薇色に染めて言っていたが、この変態ストーカーが溺愛しているのはあなたの息子だよとも言えず、ハハハと曖昧に笑っておいた。  そして放送が終わると、すぐさま僕は自部屋へと引きこもった。  当然西園寺さんに、文句を言ってやるためである。  あれは生放送ではないから、きっとこの時間なら電話も繋がるだろう。  そう考えたから、スマートフォンを手に取り、ポチポチと画面をタップして通話開始のボタンを押した。 『こんばんは、陸斗くん。君の方から掛けてきてくれるなんて、珍しいね』  ワンコール目が終わるか終わらないかというタイミングで、彼はすぐに電話に出てくれた。  早過ぎて、これまた気持ちが悪い。 「さっきのあのテレビ、なんですか?」  挨拶の言葉もなく、唐突に切り出した本題。  僕の怒りが、スマホ越しでもちゃんと伝わったのだろう。  ひゅっ、と受話器越しに、息を飲む気配。  「あは……あはは、見ちゃったんだ?あれ」  明らかに、いつも以上に挙動不審になる西園寺さん。  見られなければセーフとでも思っていたらしきその反応に、またしてもいら立った。

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