120 / 139

その秘書、有能につき①

 インターホンのモニター画面を覗くとそこには、ジーンズにTシャツという、ラフな服装に身を包む秘書の二見さんの姿。 『やっほー、海晴! 手伝いに来てやったぞ』  いつもとは、まるで異なる口調。  ……完全オフモードの二見さんと遭遇するのは今回が二度目だけれど、やはり中々慣れることが出来ない。 「頼んでない。帰れ!」  冷たく言い放ち、僕の体に再び触れようとする西園寺さん。  いやいや、さすがにそれはまずいだろう! 「せっかく来てくれたんだし、申し訳ないですよ。それに三人でやった方が、早く終わるんじゃないですか?」  おずおずと、進言した。 『そうだ、そうだ! てかさ……陸斗くんとふたりだと、ずーーーっといちゃこらしてて、終わるもんも終わらなくね?』  玄関のドア越しに、騒ぎ立てる二見さん。  はぁ、と大きな溜め息をひとつ吐き、西園寺さんは渋々といった感じでドアを開けた。 「おっじゃまっしまーす! 外から見ても馬鹿デカイ家だなと思ったけど、中もやっぱり無駄にゴージャスだな」  キョロキョロと室内を見回しながら、感嘆したように二見さんは言った。 「本当に、失礼なヤツだな。用が済んだら、さっさと帰れよ?」  僕に接する時の西園寺さんとは全然違う、歯に衣着せぬ物言い。  それがちょっぴり羨ましいと感じてしまうのはきっと、僕のワガママだろう。 「陸斗くんも、おはよ! 朝っぱらからこの変態に、変な事されてない?」    ニヤニヤとゲスな笑みを浮かべて聞かれたけれど、まさかもう手遅れですだなんて、言えるはずもなく。  曖昧に笑って誤魔化そうとしたら二見さんは心底呆れた様子で、まるで汚物でも見るような視線を西園寺さんに向けた。

ともだちにシェアしよう!