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第2話

『あれをケツで食らってんのか。 やべぇな』 「……食らわせてるのは正宗さんです」 『美味そうに食うくせに』 艶っぽい流し目に、ふい…と視線を逸らした。 逸らしたら負けという訳ではないが、なんだか負けた気がする。 まぁ、長岡に敵わないのは分かっているのだが。 『バレんなよ』 「え…?」 突然の発言に下げていた視線を画面に戻した。 関係の事なら確かに気を引き閉め直さないといけないのかもしれない。 マスクで口元が隠れるせいか長岡に会う度にニヤニヤしている気がする。 それをマスクをしていない状態でしてしまわない様にしないと。 だが、長岡が指摘したのはその事ではない。 『また触ってる。 もう3ヶ月経ってるのに飽きねぇな』 「あ、」 漸くそれが指輪を弄る事についてだと理解した三条は、それは嬉しそうに、そしてとても愛おしそうに服の上から指輪を見た。 真ん丸のアクセサリー。 楽な格好を好む三条が唯一身に付けているそれは、クリスマスにプレゼントされた“そういう意味” を持つ物だ。 「とても、大切な物ですから」 『ふぅん?』 「あ、でも、1番大切なのは正宗さんです」 ふにゃふにゃ笑いながら長岡が喜ぶ事をさらっと吐く。 こういう所が溺愛され続ける理由の1つなのかもしれない。 長岡と出逢って、5回目の春だ。 『今週は木曜もそっち行こうかなぁ』 「っ!」

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