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第8話

なんと言うか、色っぽい顔をしている。 そっと片手をポケットに差し入れた。 「あ…っ、」 それとほぼ同時に微、かに聴こえる振動音。 ぎゅっとアウターを握ってくる恋人は上がる息を必死に堪えながら言葉を紡ぐ。 「な…んで、いまっ」 「いー顔してるから、ついな」 「…っ」 マスクで顔が半分隠れているだろと言いたげな顔だが、そんなのマスクで隠れてたってやぁらしい顔になっているのくらい簡単に解る。 想像も出来る。 何年付き合っていると思ってるんだ。 駄目だと頭を振る姿さえ加虐心を煽るものだ。 たまらなく良い顔をするだけ。 そもそも、この遊びだってストレスを発散させる目的がある事を忘れてはいけない。 実家暮らしで自慰も満足に出来ず、大人達からの言葉を素直に受け取ってしまう三条の身体が拒絶反応を起こさない様にする目的がある筈なのだが、この顔を見るとつい自分の欲にすなおに手を出してしまう。 「……正宗さ、」 「1発抜いたらな」 「…ぁっ」 車に戻って電源を入れたり切ったりしながらドライブ兼ねて暗い所へ行って遊ぼうと思ったが、このまま此処で楽しむのも楽しそうだ。 顎を掴み上向かせれば、あの目がすぐそこにある。 この目に弱い時分を棚に上げいけしゃあしゃあと恋人を責めていった。 「ここで止められても困んだろ。 勃てたまま駐車場まで歩けんのか?」 「そ、れは…」 「こんな顔して、外歩けんのかよ」 じわ…っと羞恥心で目の水分量が多くなっていった。 そんな顔をするから、悪い大人に食われるんだ。
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