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第9話
アウターを握る手、その薬指に嵌まる指輪を見て長岡はほくそ笑む。
「ハァ…ぁ……ハ…ァ……」
顔を肩に押し付けると、コートのポケットから避妊具を取り出し指に被せる。
そして、ボトムスのウエスト部分から手を滑り込ませた。
元々もそうだが、既にローターを銜えているせいで締め付けがきつそうだ。
「っ!!」
「しー」
トンッとアナルに触れると猫の様に肩を跳ねさせる。
だけど、止めてやらない。
スキンの滑りを借り指をより深く差し入れる。
「……っ、」
頭を緩く振ってもやめてなんてやれない。
ここまでして、やめられないのはお互いだ。
「ぅ゛…っ、」
そのままローターを前立腺に押し付ければ、脚に力が入らないのか抱き付いてきた。
それだけで、今の恋人の状況が痛い程分かる。
あの遠慮ばかりの三条が密になる事を避けるべきと言われている時に自ら抱き付くなんて余程脚が自分の意思とは違う動きをするのだろう。
それこそ、座り込んでしまいそうな程に。
唇が弧を描くのを抑えきれない。
可愛い遥登。
俺の恋人だ。
「は…っ、く…、」
必死に声を殺そうとしているが、快感に弱い若い身体では無理がある。
頭を振っても声は抑えられるものじゃない。
「ぁ…、ハ、ァ……ぁっ、」
「こーえ」
三条の地元だと思うと興奮する。
糞みたいな性癖だと自覚はあるが、癖になったら困るし少しだけ刺激を緩めようと思う。
思うだけになりそうだが。
「…っ、」
2人は動きを止めた。
何処かから足音がする。
早さから歩いているのではないと分かるが、その人が便意を我慢し此方に戻し向かってきているのか、単にジョギングをしているのか判断しにくい。
どちらともとれるその音に三条のアナルが痛いほど締まった。
「大丈夫だから、声出すな」
「ふ……っ、………く…」
不安なのだろう。
肩に額を擦り付けながら堪えている。
あ゛ー、くっそかわいいな…
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