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第34話
ベルトを外し、ボトムスを脱ぐ。
ひんやりとした空気が脚に纏わり付き鳥肌がたつ。
寒い。
冷える。
けれど、保温効果のあるタイツを履いてこなくて良かった。
履いていたら今頃どうなっていたか。
だが、今は恋しい。
春先になっても、まだ夜は冷える。
人気もないので尚更だ。
正宗さんも寒いよな
早く履き替えよ
外で待っている長岡も同じく冷えるだろう。
それに、恋人は筋肉質なのに体温が低い。
すぐに手足が冷たくなってしまう。
それが長岡らしい体温なのだが。
それでも、やっぱり長く待たせなくはない。
う、わ……
下着の中は精液でぐちゃぐちゃに濡れている。
しかも射精2回分。
それも性欲盛んな年頃の精液。
恥ずかしいくらいだ。
タオルを当てていなければ、ヌトーっと糸をひいていただろう。
帰ったら速攻洗う……
それをさっと脱ぎ、新しい下着に脚を通した。
新品の布の感触とこんな所で下着を履き替える不安。
それが混ざりあい長岡が恋しい。
汚れた物は先程のコンビニ袋へ入れ、口を固く結んだ。
それから水しか出ない水道で手を洗う。
冷たくて指先がガチガチになったが構わない。
精液のにおいがしないか気になってしまう方が大きいから。
新しい下着とタオルで拭いたお陰もあってスッキリした。
そうして漸くトイレを出た。
「お待たせしました……」
「履き替えたか」
「はい。
スッキリしました」
「転んだりしてねぇ?」
「大丈夫ですよ」
ポケットに入れていた手をだし、隣に並んできた。
帰るか、と言い難い空気に長岡が更に1歩寄ってくる。
トンッとぶつかる手と手。
「すげぇ冷てぇじゃねぇか。
手ぇ、洗ったのか?」
「え、はい」
「風邪ひくなよ。
カイロかなんかあればやれたんだけどな…」
「平気ですよ。
ほら、こんなに動きます」
手をグーパーさせて見せた。
こんなに動くとアピールしたつもりなのだが、それを見て長岡は綺麗に整えられた眉を下げたまま頭をクシャと撫でてきた。
「会えなくなんだろ」
「あ……」
「ほんとに体調面も気にしてるぞ。
けど、やっぱ直接会いてぇし」
「俺も、沢山会いたいですから気を付けます」
「そうしてくれると嬉しい」
また掻き混ぜられる髪にふにゃっと笑った。
やっぱり、恋人の隣はとても愛おしい。
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