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第58話
長岡のスプーンを手を取り、自分のアイスクリームを救うとズイと差し出す。
「こっちも、どうぞ…」
「ん。
いただきます」
長岡は少しだけ頭の位置を下げアイスを食べた
「甘めぇ」
「甘過ぎますか?」
「いや。
遥登が食わせてくれるから、すげぇ美味い」
「また、そういうことを…」
「本当だしなぁ」
確かに自分の物の方が甘い。
長岡には甘過ぎたのだろうか。
それにしても、人を誑し込む言葉がスラスラと出てくる。
これ以上誑し込まれたら、本当にこの部屋にずっといたくなってしまうというのに。。
2口目を迷っていると、あー、と口を開けられる。
「もう一口くれるか」
「はい」
ズイっと差し出すと、また口の中へと消えていった。
ジッと見詰める三条に気が付き、長岡も三条にアイスを差し出す。
交換、とはこれで合っているのだろうか。
だけど、長岡のも美味しい。
それに、嬉しい。
恥ずかしいけれど、久し振りにベタベタと甘えている。
やっぱり2人きりになれる部屋は良いな。
「垂れたの舐めさせてぇな」
「そ、んな……破廉恥な…」
「破廉恥なの好きじゃねぇかよ」
「……なんで、今日はそんなにあれなんですか」
「楽しいから」
「楽しいって…」
「2人っきりだし。
飯も食ってくんだろ。
だったら、楽しいに決まってんだろ」
なら、今日はベタベタに甘やかされても良いか。
もう何度もかも分からなくなったが、スプーンが差し出されまた口にする。
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