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第59話

ぐー、ぎゅるるるる… 大きな鳴き声に三条は眉を八の字にした。 「もうすぐ出来るからな」 「すみません…」 「昼も結構食って、アイス食って、まだこれだもんな。 元気でなによりだ」 レトルトのパスタソースにキノコと野菜を足し加熱している長岡は、手際よく食事の用意を整えていく。 良いにおいで、それがより一層腹を刺激する。 あぁ、本当に良いにおいだ。 「最近、食べても腹が減るんですよね…」 「成長期か?」 「それは、流石に…」 「沢山食え。 で、おっきくなれ」 「……正宗さんの身長超しちゃいますよ」 「期待してよ」 ニッと笑うその顔は、子供のように無邪気。 そしたら、キスする時に背伸びしてくださいねと続ければ、伸び代しかねぇなと返ってくる。 本当に、こればかりは伸び代に期待だ。 背伸びをする長岡を見てみたい。 いや、それより、気になることがある。 「あの、この時間に食べても大丈夫ですか?」 いつもなら、三条が自宅に帰宅してからの食事。 というか、家族との食事を終えるのを待ってくれている。 それなのにこんな早くから食べたら夜に腹が減るんじゃないか。 「平気だよ。 俺も軽く食って、また食うから」 「良いんですか…?」 「当たり前だろ。 俺が遥登と飯食いてぇんだよ。 食ってくれ」 嬉しい。 嬉しい気持ちを伝えたくて隣に並ぶと手の甲で頭を撫でられる。 長岡も同じ気持ちなんだと伝わってくる。 言葉にしなければ気持ちは伝わらない。 けれど、言葉にしなくても伝わることもある。 長岡と一緒にいると、それを実感する。

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