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第60話

「やっぱり正宗さんが作ってくれるご飯、美味しいです!」 「そりゃ良かった」 鼻歌でも歌いそうなほどご機嫌な三条はクルクルとフォークに麺を巻き付けている。 「そんな美味いかよ」 「美味しいです!」 「遥登の飯の方が美味いけどな」 「そうですか? 正宗さんの方が好きです」 三条は本当に美味そうに飯を食べる。 それを差し引いても、今の言葉は嬉しい。 つい沢山食べさせたくなるほどに。 ご家族との時間も大切なので、そう多くは食わせられないが、恋人ならもう1食は軽いだろう。 また1口食べると、しあわせそうな顔をした。 本当にのびのびとした心を持っている。 それがすごく愛おしい。 可愛い恋人の可愛い表情。 長岡も素直な気持ちを言葉にした。 「2人で食うからだろ」 「え……」 分かりやすく顔色を変えた三条。 パスタソースみたいに真っ赤だ。 というか、口の端が本当に赤くなっている。 先程みたいにティッシュで拭えば更に真っ赤だ。 「俺はそうだ。 遥登食えると更に美味い」 「そ、んな…の、俺だって」 ゴシゴシと拭く手首に触れられ、止められた。 どうやら、ちゃんと言葉にしたいらしい。 「こうして、直接一緒に食べられて嬉しいです。 やっぱり、一緒が良いですね」 あぁ、本当にその通りだ。 一緒が良い。 画面越しではなくて、こうして対面で。 「だろ」 三条と食べる簡単な飯はすごく美味くて、晩飯が味気なくなりそうだ。 それでも、大切な時間がほんの少し戻ってきてくれて嬉しい。

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