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第70話

息を飲む音。 それはどちらのものだったか、自分自身でも分からなかった。 分かるのは、手のひらにジワ…と拡がる熱と長岡のイき顔の蠱惑さ。 えっちぃ……顔 そんな顔も頭に叩き込む。 下着に染み込む精液のアツさがジワジワと染みてくる感覚さえもだ。 1つも取り零しがないのように。 セックスの時は自分の事でいっぱいいっぱいになっていてこんなじじっくり見る機会はほぼない。 「あ゛ー…、やっちまった…」 長岡は細く息を吐き出すと、窓に後頭部をぶつけ目を閉じた。 賢者タイムになった長岡から手を離したいのだが、いまだ重なる手がそれを許さない。 触れていても大丈夫なら良いのだが。 でも、モゾモゾしないか。 それも、尿道に残った残滓のあの感じ。 気になる事はあるが、今は顔を伺う事しか出来ない。 イッたばかりの陰茎に与えられる刺激の強さは自分も理解しているから。 「すっきりしましたか?」 「ん、さいこーだった。 パンツ汚したのひっさびさ。 餓鬼かよ」 「俺は、嬉しいです」 「あ、手ぇ悪りぃ」 「いえ」 離されてしまっても手の熱は引かない。 恋人の熱を孕んだまま。 「つい握っちまった。 ウエットティッシュやるから拭きな」 「……舐めたら、……駄目ですか」 「やっと収まったんだぞ」 「舐めたい、です」 「精液のにおいさせてコンビニ行くのか?」 「だって…」 「心配だから、舐めるのは今度」 「車内ににおい籠ってるんですから今更です」 「……ほんと。 ファブってから行けよ」 ご褒美をもらった三条は嬉しそうに笑う。

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