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第72話
多めに金を渡し、コンビニへと歩く背中を見詰める。
ほんと、でかくなったよな
あんなに初々しかった学生の姿は、今や立派な男の背中になった。
頼りがいがあって、優しくて、格好良くて。
すごく良い成長だ。
間近で見ていてもそう思う。
とはいえ、先ほどの手コキはどこで覚えたのか。
自分の好きな動きを覚えているあの記憶力の良さが恐ろしい。
さほど教えた覚えはないぞ。
学習能力か。
だから、恋人は頭が良い。
若干心配だ。
コンビニの自動ドアが開き、細長い陰が伸びる。
小走りで駆けてくるのでドアを開けてるとサッと腕や頭を払ってから乗り込んできた。
「お待たせしました。
ありがとうございます。
けど、どこで履き替えるんですか?」
「……忘れてた。
駅のトイレ借りるか」
「タオルも買ってきたので使ってください」
ほら、出来た旦那だろ。
「マジで助かる。
金足りたか?」
「あ、ICカードで買いました。
でも、正宗さんがチャージしてくれてるやつで……」
部屋までの公共交通サービスの利用費をチャージしたICカード。
あの日渡したそれを三条はいまだに大切にしている。
時々借りてはドンッとチャージし返すを何度も繰り返していた。
しかも、学生時代に使っていたパスケースも大切に使ってくれている。
そんな古びた物を使わなくても良いのに、ずっとだ。
寧ろ、最近ならスマホからICカードを利用する方が便利だろうに。
「まぁ、良いか。
ちゃんとそっちから払ったんなら良いよ。
ご両親からのお金では払うなよ。
パンツ買って頂くとか、流石にやべぇだろ」
「それは少し考えました…」
「だろ。
だから、俺が渡したもんから払ってくれてれば安心だ」
「はい」
「じゃ、益まで付き合ってくれていた」
「はいっ」
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