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第75話

駅から50メートルほどの距離にある道の駅に場所を移す。 駅の駐車場は駅利用者の場所なのでと動いたが、道の駅も利用者の気配はなくて気兼ねなくいられる。 トイレと自動販売機、電気自動車の充電スポットは比較的明るいが、ここが道の駅だと言われなければ気が付かない。 そんな場所だ。 飲み口を拭いてからカシュッと開けた。 同じように開栓した三条の缶に同じものをぶつける。 「乾杯」 「!」 驚いた顔をして、次の瞬間にはふにゃりと笑う。 「乾杯です」 「やっぱ笑ってる方が似合ってる」 「正宗さんもですよ」 「なら、元気で俺の隣にいてくれ。 そしたら笑えるから」 犬の腹をそうするように、頭をわしゃわしゃと撫でくり回す。 「わっ、わっ、溢しちゃいます…っ」 「溢したら舐めてやる」 「汚れるのは服ですよ」 「遥登を舐めれりゃどこでも構わねぇよ」 「目的が変わってますよ…」 「そうか? 俺の目的は、いつも遥登だぞ」 「……言い方が、えっちぃです」 「そうか?」 眉を下げて笑う三条も確かに好きだ。 けど、やっぱり笑った顔が1番だ。 何度も、そう思う。 惹かれたのはこの子の目ではあるが、友人と楽しそうに話す顔や学校行事で見せる顔がすごく魅力的だった。 キラキラしていて、どんなことをしても手に入れたいと願うようになっていた。 その頃と、この気持ちはなにもかわっていない。 「溢しても良いからな」 「溢しませんよ……」 そう言って2人でぬるくなってきたココアを飲む。 離れがたい時間はあっという間に過ぎていく。

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