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第77話

漸く授業が終わった。 腰掛けたい。 教室内をウロウロしないだけで腰の負担が増えるようだ。 もう少しあたたかくなれば窓も全開に出来るので、それまでは致し方ない。 健康は金では買えないからな。 準備室のドアを開けると、なにか空気が重い。 一体どうしたんだ。 「長岡先生。 連続授業、お疲れ様です」 「お疲れ様です。 柏崎先生、どうかされたんですか? すごく疲れて見えますけど」 2時間連続授業だった長岡は休み時間に教科書の交換に立ち寄った程度で、すぐに踵を返した。 ので、なにがあったのか分からない。 「いや、教頭が少し時間あるなら手伝ってくれって…。 それは良いんです。 すごく疲れた顔してたから…行ってみたら地獄みたいなメンツが揃ってて、まさに地獄でした。 あの顔になるの分かります……って人しかいませんでした」 地獄みたいなメンツ…。 なんとなく予想がつく。 みたいな、というより、地獄だろ。 職員も人間だ。 合う合わないがある。 まして、固定概念ガッチガチの年配教諭とくれば、なにかとめんどくさい。 顔が良いから、生徒に媚を売って、言われもないことを言われたが、興味もないので気にはしてない。 そもそも媚を売るなんて三条にしかそんなことはしない。 有難いことに国語科にはいないが、それでも挨拶や用事があれば話さなくてはならない。 たった、それだけでトゲトゲと。 暇なのだろうか。 それとも性欲でも溜まってるのか。 どちらにせよ、興味もないが 長岡が、腰を下ろそうというタイミングでドアがノックされた。 「失礼します。 柏崎先生」 「教頭、どうかされましたか。 なにかミスとか…しちゃいましたか…」 「いえ、先程は助かりました。 それで、これ…お茶です。 今、買ってきました。 良かったら飲んでください」 あたたかなお茶のペッドボトルを手渡され、隣席の教諭はパッと顔色をかえた。 「ありがとうございますっ」 職員も人間だ。 嬉しい事をされたら嬉しい。 やって良かったと思える。

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