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第102話

文字の羅列の上を視線で撫でる。 面白い本であればあるほど、それは止まらない。 既に2時間程沈黙が続いているが2人にはよくあること。 特別なにもおかしなことではない。 比較的短い本だったことと、三条の集中力で、あっという間に最後の1文を読み切った。 あとがきも読み終わり、漸く時間を進める。 面白かった… もっかい読みたくなるやつだな 傍らのスマホを手元へ引っ張り時間を確認すると、まだ天辺にはなっていない。 もう1度読むことも可能。 もう1冊新たに読むのも出来はする。 どうしようかと悩みながら大きな欠伸をした。 『眠いか?』 ハッとすると通話状態のアプリには長岡の顔。 「あ、すみません。 大丈夫です」 『今日は疲れたろ。 ゆっくり身体休めんのも大切だぞ』 「でも……、勿体ないです」 我ながら子供みたいだとは思う。 けれど、長岡と同じ時間を使いたい。 少しでも長く。 その考えは、若すぎか。 子供みたいか。 女々しいか。 長岡は本にスピンを挟み、傍らに置いた。 『じゃあ、ゲームすっか』 「え、良いんですか…? 本、読み途中ですよね」 『また明日の楽しみにする。 あ、でも、なるべく頭使わねぇやつな。 頭冴えんだろ』 「ありがとうございます!」 『俺も、もう少し遥登の顔見て見ててぇし』 ゲーム機を取りに行く背中にこっそり声をかけた。 「大好きです」

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