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第105話

「はーう」 「綾登、遥登寝てる?」 「んっ」 「じゃあ、静かにししてよっか」 綾登の声だ。 「よしよし。 いーこ、いーこ」 あったかい手が頭を撫でた。 テレビも消さずに、すっかり寝てしまったようだ。 だけど、まだ眠い。 自分が寝る前にされていることをしてくれている末弟。 目を開けて遊んであげたいが、まだ目が開かない。 そのままでいると小さな足音が遠ざかっていく。 「ぎゅーぎゅー」 「お茶じゃなくて良いの?」 「ちゃーちゃ」 「はい。 コップ貸して」 「あい」 家族の音、声。 気配がある。 1人が寂しい訳ではない。 ただ、この家は五月蝿い方が似合うんだ。 そうやって過ごしてきたから。 優登がいて、保育園に入園する前は綾登がいて。 自分も学校へと通っていた。 だから、いつも傍に誰かいたから、1人きりでずっと過ごすのが違和感を覚える。 「おあつ、くあはい」 「バナナとチーズ、どっちが良い?」 「おっちも」 「お夕飯食べられる? 今日はお魚だよ」 「できう」 ほんとかなぁ、と言いながらも両方貰えるんだ。 夕飯もちゃんと食べるのを知っているから。 こうやって育ったんだ。 綾登を見ていると、それを知れる。 コップを溢さないように持ってきた気配を感じたが、また眠ってしまう。 流石に、優登が帰ってきたら起きなきゃ…な……

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