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第116話

豚肉と玉葱を甘辛く炊き、うどんにのせる。 勿論、米にのせても良い。 これなら優登も足りない事はないだろう。 ベビーガードの外側に椅子を持ってきた綾登はチーズを齧りながらテレビを観ている。 ここにいれば、蒲鉾の端切れを貰えると思っているからだ。 自分にも記憶がある。 端切れや味見ほど美味く思えるのは何故だろう。 それと、大切な人の傍は無条件に安心するから。 「はーう」 「んー? なぁに」 「ちーず、おいし」 「美味しいよな。 俺も食おっかなぁ。 あ、お肉味見するか?」 「やったー!」 小皿に小さな物をぽいぽいと入れフォークと共に手渡せば、恭しく両手で受け取る。 「おいしそね」 「美味しいかなぁ」 「いたあきます!」 3回生になり1人暮らしをするつもりでいた。 けれど、今までしていた短期のバイトはほぼ休み状態。 コンサートの設営は時給が良い。 だが、そのコンサート自体がないのが現状だ。 離れて暮らせば会う事が憚られる現状に1人暮らしは延期した。 どちらにせよ、社会人になるタイミングで実家は出るつもりなのでほんの少し伸びただけ。 長岡とも会えているし、不満はない。 それに、こんな風に弟と一緒にいられるんだから。 「んーまっ」 「優登の真似して」 くしゃくしゃと頭を撫でると、綾登はぷくぷくの頬を膨らませて喜ぶ。 この顔が見れるのなら実家も良い。

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