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第121話

長岡の愛車の後部座席へと乗り込み、蓋をバコッと開ければゴミはすぐに回収される。 これを素でしてしまう人が、今日は更に意識的に甘やかしてくれるらしい。 「ありがとうございます」 「どういたしまして」 長岡の物も蓋を開け、それから漸く食べはじめる。 直接、口を付けなければセーフだ。 三条もいただきます、と食べはじめた。 「いただきます!」 「どうぞ」 バニラアイスクリームをスプーンで掬うとパクッと口に運ぶ。 その途端、バニラの濃厚な甘さが口の中をしあわせにしてくれた。 「んー、美味しいです!」 やっぱり、食べ物は人をしあわせにしてくれる。 甘くて、冷たくて、美味しい。 「だろ。 値段違げぇからな」 「え…?」 三条のクリクリした目がゆっくりと手元をとらえた。 確かに、ワッフルコーンだ。 しかも、アイスの水分が染まないようにチョコレートでコーティングされている。 ソフトクリームはコンビニで買わないのでまったく気が付かなかった。 「こ、交換しましょうっ」 「半分ずつ食うんだろ。 遠慮すんな」 そう言いながら、長岡はミックスソフトを口にした。 「社会人の財力……」 「ははっ。 甘やかすっつったろ」 「……美味しいです」 「沢山食ってくれ。 甘やかすの楽しいからな」 「絶対に正宗さんの介護しますから」 「ほら、あーん」 手からスプーンをとられると、それでミックス味のアイスを掬い口元へと運ばれてきた。 またはぐらかされる。

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