121 / 514

第122話

そこまま食べさせて貰っていると、口の端からアイスが垂れた。 「あ、わり」 「大丈夫です」 拭おうとして伸ばした手を咄嗟に掴まれる。 なんでだと恋人を見上げれば、手が伸びてきた。 「待て」 「え……」 「俺がする」 てっきり拭かれるのだと思い動きを止めたのだが、伸びてきた手は口元を通り越して後頭部へと回ってくる。 しかも指先が項の辺りをさわさわと擽っているような……気がする。 モゾモゾするというか……その、……感じそう。 「え……、あの……」 「の、前にちょっと。 ほら、フェラした後みてぇでエロいし写真撮らせてくれ」 「拭いますから……」 「だぁめ」 「ぅあ……っ」 今、首のとこスッされた…… えっちぃ事してきた… 急にドキドキと心臓が騒ぎはじめる。 これが長岡の甘やかし。 それも頷ける。 「やぁらしい声。 ほら、こっち見ろよ」 「甘やかすって…」 「甘やかしてるだろ。 好きなくせに。 顔が嬉しそうだぞ」 そりゃ、嫌かどうかと聴かれたら嫌ではない。 寧ろ、嬉しいまである。 あるが、そんなに顔に出ているだろうか。 はしたない。 そんな顔を長岡に見せているなんて。 「ほら、覚えろよ。 遥登なら、おかずに出来るよな」 「ん…ッ」 今度は耳の後ろを掻かれる。 小さな刺激ではあるが、感じてしまう。 スニーカーの中で足の指を丸めて堪えるが、声が漏れてしまいそうだ。 アイスを持つ手に必要以上に力を入れてしまえば、コーンが割れてしまう。 気を付けなければと思うのに、不意に力が入ってしまう。 不可抗力だ。 この身体があさましいからではなくて、長岡の色気がただ漏れなのが原因だ。 「こんな世の中じゃなきゃ舐めたのにな」 鼓膜に吹き込まれる声の甘さはアイス以上。

ともだちにシェアしよう!