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第124話

長い睫毛が縁取る目蓋が持ち上がると、部屋を見渡す。 誰もいないのは知っている。 けれど、一応見ておく。 が、今日も黒猫の友達しかいない。 「おあよぉ」 まずは友達に挨拶。 それからベッドから降り、みんながいる部屋へと向かう。 勿論、シシも一緒に。 ずっと一緒の友達だ。 ペタペタと床を歩いていると兄の声が聞こえてきた。 嬉しくなった綾登はペッタペッタと足取りが軽くなる。 「みっちゃあ」 「綾登、もう起きたの? おはよう」 「あよぉ」 トタトタと小走りで抱き付くと、しゃがんでくれた母が頬をぷっと両手で包んだ。 あったかくて良いにおいがする。 みっちゃんのにおいだ。 「お誕生日おめでとう」 「誕生日おめでとう!」 「おめでとう。 って、眠そうだな」 「あっとます! ねんね、ないよ」 「朝ご飯食べよっか。 今日は、お魚だよ」 「すきぃ」 「とーさんっ、綾登起きたよ」 庭の手入れをしていた父がリビングに面した窓から顔を見せる。 「綾登、誕生日おめでとう。 ご飯食べたら一杯遊ぼうな」 「あーとね!」 母親によって椅子に座らせられると、目の前のご飯に目を輝かせた。 「これ、すき! これも!」 「沢山食べてね」 「いたあきます!」 今日はキラキラした日だ。

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