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第126話

「ありがと…」 「うん。 気を付けてな」 「すぐそこだし。 じゃ、いってきます」 すっかり思春期にも慣れたと思ったが、思春期になりきれてないところがチラチラと見えてくるのがとても可愛い。 まぁ、そんな事を言ったら優登が嫌な気持ちになるだろうから決して言わないが。 だが、妻に似た顔立ちで思春期真っ盛りというのもやはり興味深い。 出会う前の妻もこんなだったのだろうか。 次男も送り届け、自分も出社するかというタイミングでスマホが着信を知らせた。 「もしもし。 古津? おはよう」 『あ、三条さん、おはようございます。 今、お時間大丈夫ですか』 「大丈夫だよ。 こんな朝から、どうした? 体調良くない 困ったことでもあったか?」 『いえ、私的な事です。 あの、今日の深夜に娘が産まれました。 三条さんに早くお知らせしたいって思いまして。こんな朝からすみません』 「おめでとう! 奥さんも大丈夫? なんともない? うん、良かった…。 娘さんか。 可愛いだろうね」 『はいっ。 すごく可愛いです。 母子ともに健康で、すごく…安心しました。 ずっと痛い痛いって言ってて、俺はなにも出来なくて…』 その気持ちは痛いほど分かる。 大人が痛くて唸るんだ。 どれだけ痛いか想像することしか出来ないが、きっとそれ以上なのだろう。 それでも、自分達の子供を命をかけて産んでくれる人。 大切にしなくてはいけない人。 『娘もちっちゃくて可愛いです。 離れがたいけど、これから出社します』 「休めば良いのに。 でも、出社するなら気を付けてな。 古津になんかあったら大変だろ。 家族が大切なら自分も大切にしないと」 はいっ!と元気な声が返ってくる。 次男より素直だ。 さ、今日は速く帰宅出来るようにバリバリ仕事を片付けないと。

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