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第128話

夕食をしっかり食べ、綾登のお腹はぽっこりしている。 それでも、今日の食事は終わらない。 「お腹、まだ大丈夫?」 「ぽんぽこりん!」 「わ、ほんとだ。 真ん丸で可愛い」 母親とじゃれている綾登。 きゃっきゃっと可愛い声が部屋にいっぱいだ。 今日が綾登にとって最高の日であれば、それだけを願う。 誕生日とはそういう日であってほしい。 明かりを落とした部屋で、誕生日の歌を歌う。 すると、 「あっ!」 小さな指が、次男の持ったお皿の上を差す。 「お待たせ」 小さなロールケーキが積み重なって出来たケーキが運ばれてきた。 その上には誕生日おめでとうと書かれたプレート。 昨晩、優登が夜中に作っていた物だ。 沢山の果物がそれらを彩り、輝かせる。 学校から帰宅して、せっせっと作っていたそれは、机のど真ん中で主役の顔をしていた。 「いちお!いっぱい! なーなも!」 三男の顔は大興奮。 「おめでとう」 「誕生日おめでとう」 「赤ちゃん卒業か」 「へへっ。 へへぇっ」 三条はそんな家族を切り取っていく。 いつか、この写真や動画を見返す時、同じように笑っていて欲しい。 今も大切だ。 だけど、同じだけ未来も大切。 愛されて育ったことが自信になるかもしれない。 自分がしてもらったように、それを弟達にもしていく。 「綾登、フーッて出来る?」 「ふー」 蝋燭の炎は、ゆらっと動いただけだ。 「もっかい」 「ふぅー」 またも同じ結果だ。 だけど、じわじわと蝋燭が短くなっていく。 果物があたたかくなるだろう。 若干の焦りがあるが、綾登は上手く吹き消せない。 優登は壁にぶら下がる、ハンディファンを取ると綾登に持たせた。 「いけ!」 「なくなった!」 暗くなった部屋にパッと明かりが戻ると、みんながまた綾登の周りに集まる。 「おめでとう」 「へへっ!」

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