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第129話

口と言わず、顎や鼻までヨーグルトに塗れた去年とは違い、今年は手掴みしやすい1口─大人の1口─しやすいサイズで、正面にクリームはない。 フォークもスプーンも使うが、手掴みの方が使いやすいのは確か。 弟の事を考えられたケーキだ。 そして、大好きないちごとバナナも沢山飾られている。 やっぱり名前の通り優しい子だ。 「んーまっ」 いちごを食べてご機嫌な綾登は反対の手で頬を抑える。 頬が落ちるといけないから。 「誕生日だからな、めっちゃ気合い入れた。 キウイも可愛いだろ。 花型だぞ」 「かーいねぇ」 「綾登、何歳になった?」 「にさい」 手は4歳を示している。 まぁ、良いか。 歳は理解しているから。 ずり落ちてきた袖を父親が捲ると、綾登は食べかけのいちごを差し出す。 「どーど」 「良いのか? ありがとう」 「んへぇ」 満面の笑みをまた切り取る。 一年、また一年、記録を残し、いつか溜まりに溜まったそれを本人に見せたい。 綾登が泣いていても周りが笑っている写真。 いつも笑顔が傍にあるそれらを見て綾登はどんな顔をするのだろうか。 「はう、どーど」 「ありがとう。 あー」 「あーん」 「んまっ!」 「んまね!」 このままの顔だと良いな。

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