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第133話

子供みたいに屈託ない、無邪気な顔。 例え、その半分がマスクで隠れていても分かる。 ウイルスごときが、これまでの時間をなかったことに出来ると思うなよ。 そんなことでは揺らがないだけの時間を過ごしてきたんだ。 絶対的な自信がある。 「おめでとう」 「ありがとうございます」 「21か。 ピチピチだな」 「ピチピチって…」 同じ20代もあと3ヶ月と少し。 少し寂しい気持ちもある。 どうしたって歳の差は埋められない。 知り合えなかった間だってそうだ。 それらを、どう受け止めるかは個人こじんの自由だが、少なくとも長岡は伸び代と同じように捉えている。 知りえなかったのなら、知れば良い。 話をして、写真や動画を観て、想像して。 それだって、楽しめる。 だから、すべてのことに落ち込む必要なんてない。 埋め方は沢山だ。 頭をポンポンと撫で21歳になったばかりの恋人の 「とにかく、移動するぞ。 駐車場な」 「はい」 「今日は特別」 しっかりと手を握り、今来た道を、今度は2人で歩く。 「へへっ。 誕生日様々です」 「俺も。 ご両親には申し訳ねぇが、感謝だな」 「申し悪くなんてないですよ。 だって、俺はこんなにしあわせです。 それは事実なんですから」 この子にも、絶対の自信があるらしい。 「連れ帰りてぇ」 「しますか?」 「生意気になって。 いつか、ぜってぇ帰さねぇからな」 「楽しみに待ってますね」 「ほんと。 伸び代しかねぇな」

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