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第135話

「それと、これは誕生日プレゼント」 「え、ケーキいただきましたよ」 「ケーキはケーキだろ。 誕生日プレゼントとは別物だ」 だと思ったが、やっぱりこの反応だ。 そんなの気にせず、渡すがな。 ほら、と手渡すとクリクリした目が真っ直ぐに自分を見てくる。 「遥登の為だけに選んだから、見てくれよ」 「ありがとうございます。 嬉しいです」 頭を下げながら受け取った平べったい箱。 綺麗に包装されたそれを、三条は丁寧に剥がしていった。 丁寧に剥がされると、それだけ大切に思ってくれているんだと嬉しくなる。 素でそういう事が出来るところも三条らしくて好きだ。 箱で分かるだろうが、それを開けた瞬間、三条はとても嬉しそうな顔をした。 「ネクタイです!」 「実習用のな」 「ありがとうございます…! 似合いますか?」 首元にあてがってみせる三条に、しっかりと頷いた。 よく似合う。 想像よりずっと良い。 やっぱり現実が1番輝いている。 「夢が叶ったら、見せびらかしちゃいますね!」 「あぁ。 楽しみにしてる」 嬉しくて眺めていると、長岡はもう1つ紙袋を手にした。 「これも」 「そんな、あれもこれも…」 「祝わせろ。 俺が、楽しいんだから。 ほら」 ブランド名の書かれた紙袋を手にした三条は、眉を下げる。 けれど、きっと中身を見たら変わるはずだ。 「見てみ」 「これ……」 「ベタだったか?」 三条の目がキラキラとする。 しかも、尻尾まで揺らして。 「俺と同じ香水」 「う、嬉しいです…っ!」 揃いのボトルに、三条は目を輝かせるばかり。 「マーキングはしつこくするタイプなんだよ」 「嬉しいマーキングです! へへっ」 馬鹿。 嬉しいのはこっちだ。

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