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第139話

風呂にしっかり浸かった身体はホカホカだ。 部屋へと帰ってくると、もう一度プレゼントされた紙袋の中を覗く。 香水、もらっちゃった ネクタイも すげぇ嬉しい 高価な物で恐縮したのも本当。 だけど、嬉しいのも本当だ。 月並みな言葉しか返せなかったが、すごく、すごく嬉しい。 それから、長岡の服を手にし顔を埋める。 恋人の良いにおいがする。 最高だ。 このまま、ふとんに潜り込んだらどんなにしあわせだろうか。 ゴロンとベッドに寝転び、本人に甘えるように抱き締めながらゴロゴロしていると、不意に視線を感じた。 「っ!!」 画面の向こうで長岡が笑っていたんだ。 静かに帰ってきたのか、音で気付けなかった。 イヤホンを耳に差し込むと、その声が鮮明に聴こえてくる。 『ただいま。 随分と可愛いことしてんだな』 「お、かえりなさい、です…。 これは……なんと言いますか、」 『香水使ったのか?』 「あ、いえ。 まだです」 『で、あの反応かよ。 なんなら、その服やるよ』 「え」 長岡の私物だ。 弟達や母の目に入らないように、この部屋には長岡の私物はほぼない。 借りている本と、交換している服。 それくらいだ。 貰った物は沢山あるので、数には含めない。 指輪とか。 腕時計とか。 バレンタインのお返しの飴の瓶とか。 高い物ばっかりだ。 だけど、その多くはこの部屋から持ち出さない。 だが、服となれば着て良い。 着てリビングで寛いだり、出掛けたり出来る。 『嬉しいか。 やるから着てくれ』 「ありがとうございます…っ」 『どういたしまして。 マーキングには余念がないからな。 嬉しいよ』

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