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第143話

暫くそうして遊んでいると、買い物へと行っていた両親が帰ってきた。 長男と三男が廊下へと顔を出す。 「おかえり」 「たらいまよ」 「ただいま。 留守番ありがとう」 おんぶされたまま、綾登は無邪気に手を振った。 「お、おんぶされてんのか。 良いな」 「へへぇっ」 更には両親まで揃い、綾登のご機嫌はより良いものへと変わった。 人懐っこいのは誰に似たのだろう。 母親の脇を通り越し、父親は台所へと真っ直ぐに進む。 手にはエコバック。 その中をガサガサと漁りながら。 「優登、優登」 「んー。 おかえり」 「ただいま。 蝋燭買ってきたよ。 2と1。 それと、ほら、クマも。 可愛いだろ」 「ありがと。 クマ、可愛いじゃん」 なんだか、可愛らしいケーキが出来上がりそうだ。 素直じゃない次男も、今ばかりは素直だ。 「綾登、お土産買ってきたよ」 「おみゃげ」 「こどもの日だからね」 「ちあう。 たんじょびよ」 「そうだね。 今日は遥登の誕生日だね」 5月5日、こどもの日。 国民の休日だ。 だけど、綾登にとっては1番上の兄の誕生日以外のなにものでもないらしい。 「おめっとうなの」 「おめでとうって、ずっとおんぶされてんだよな」 「父さんの血が濃すぎんだよ」 「どっちかと言うと優登だろ…」 「は? 俺だって、父さんの遺伝だろ。 人に擦り付けんなよ…」 むぎゅむぎゅと兄の背中に頬を押し付け、足をブラブラさせる。 絶対に兄は落とさないと自信がある。 そんな顔でドヤっている。

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