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第144話
頬袋をパンパンにして食べるからあげの美味いこと。
他の料理もすごく美味しい。
机の上の料理がなくなっても、今日は最高のケーキまである。
「おえでと、ござます!」
「ありがとう」
「蝋燭に火付けるから、父さんあっち」
「ふーする?」
「兄ちゃんがな。
今日は兄ちゃんの日だろ」
次男が蝋燭に火を灯すと、部屋の電気が消された。
家族みんなは、一体いくつの誕生日だと思っているのだろう。
「綾登、火使うからシシ守ってね」
「あーい」
艶々のチョコレートでめかしこんだザッハトルテ。
その上にはグラサージュでえっちになった苺。
更にはマカロンまで飾られ、なんともえっちだ。
そこに突き刺さる鮮やかな色の数字を模した蝋燭とクマの蝋燭。
それが炎で溶けていく。
勿体ない。
今、この瞬間は永遠ではない。
溶けて消えてしまう。
折角自分の為に家族が用意してくれたのに。
だけど、全部頭に叩き付けた。
目を閉じたって分かるほど鮮明に。
勿論、写真も撮ったけど。
それとこれとは別だ。
「マジで吹くの?」
「吹く」
「はう、ふーっ。
できう?」
「出来るよ」
フーッと吹き消すと、綾登がパチパチと手を叩いた。
「遥登、おめでとう」
「おめでとう」
「おめえと!」
「兄ちゃん、誕生日おめでとう」
「ありがとう」
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