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第146話

助手席に座る三条はご機嫌だ。 今日が誕生日だかりではなく、デートだからだと良いなと思いながらハンドルを切る。 「今日は2回も会えちゃいました。 良い日です」 「嬉しい?」 「はいっ」 のびのびした笑顔がすごく三条らしい。 擦れることなく真っ直ぐに育つ恋人。 同級生達も良い子達だったが、三条は殊更だ。 真面目で教えたことはなんでも吸収し、自分の力になる。 教師達からの受けも良い。 だけど、それだけではない。 人間らしいところも、時々子供っぽくなるのも、全部が愛おしい。 「俺もすげぇ嬉しい。 夜中に一緒にケーキ食って、で、今はデートだろ。 最高だ」 「へへっ」 目的もなくただ車を運転し、どうでも良い話をし合う。 折角の誕生日なのに、と思うだろ。 だけど、隣を見たら解る。 無垢な笑顔が自分だけに向けられている。 これが答えだ。 他人の模範解答なんて知らねぇし、興味もねぇ。 俺が見ているのは、遥登だけ。 「振替休日最高ですね」 「遥登の誕生日の方が最高だ。 生まれてきてくれて、ありがとな」 そのまま暫く車を走らせていると、鳩の鳴き声のような音が車内に響いた。 慌てて腹を押さえながら謝る三条には失礼だが、笑いが堪えられない。 「すみません…」 「いや……、くく…っ、マジか」 話を聴く限り腹いっぱいに食った筈だが、その腹が催促している。 この身体のどこに、そんなに大量の飯が詰まっているのか。 消化が早いのだろうか。 「コンビニ行くか」 「すみません…。 大丈夫ですから、腹は無視してください」 きゅー、こぽこぽこぽ… 「……この腹は、無視してください…」 「……くく…、寄るよ。 なんか食おうぜ。 ケーキとか」 「本当すみません…」 「遥登と食えんの嬉しいからな。 気にすんな」

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