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第147話

長岡は、珍しく一緒にコンビニに入ろうと行ってきた。 確かにこの時間にこんな町の外れのコンビニに利用客はいない。 覗く限り店員も年配の男性だ。 「な?」 マスクもしているし、ここなら同級生に会うこともないだろう。 「一緒に行きます」 「うし。 決まり」 夜中のコンビニは店員が1人でポツンと立っているだけ。 その店員は、長岡と三条に気が付き、いらっしゃいませとマニュアル通りに声をかけた。 関心はない。 それが安心する。 「なんにする? お、ロールケーキあんだな」 「そんなケーキばっかり頂くのは…」 「内臓脂肪、気になる歳か? なら、ゼリーにすっか?」 「内臓脂肪は、まだ考えてもいませんけど…」 「うん?」 「良いんですか…?」 「勿論。 じゃ、これな。 あとお茶買うか」 2つそれを手にすると更に奥へと足を進める。 パック飲料にアルコール。 お茶やコーヒー、ジュースと1面に並ぶ夢のような棚。 その前で、長岡に声をかけた。 「コーヒーじゃなくて良いんですか?」 「あぁ。 お茶の気分なんだよ。 遥登はなに飲む?」 「あ、俺が取ります。 俺は烏龍茶にします」 「助かる。 じゃ、俺も同じの」 2つ同じのを取り出すと、長岡の後ろを歩きながらレジへ。 ドキドキするのを押さえながらカウンターに商品を置けば、事務的な作業。 チラッと長岡の顔を見てまた手を動かす。 興味はなくとも、つい見てしまう顔だ。 それには激しく同意する。 同性から見ても格好良い顔立ち。 声も低くて落ち着いているのに、通る声だ。 気になってしまうよな。 「ありがとうございました」 またもマニュアル通りの言葉に頭を下げ、2人っきりになれる車内へと急いだ。

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