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第149話

5月も終わりが近付いてくる。 それにしても暑い。 扇風機を回しながら、服を着替えた。 裸足だけど。 『おー、似合ってる』 次男が選んでくれたスーツに身を包んだ三条は、カメラに向かって笑ってみせた。 ちなみに、ネクタイは誕生日プレゼントの物だ。 やっぱり一番最初に見てほしいので、絞めてみた。 自分で謂うのもなんだが、似合っている。 顔色がパッと映え、だけど目立ちすぎない絶妙な色やデザインだ。 少し早いが、ネクタイを絞めたかったのもありスーツを新調した。 「ありがとうございます。 自宅で洗えるやつなので、万が一汚しても安心です」 『洗える方が絶対に良い。 チョークって白が多いだろ。 付くと目立つんだよな。 払う手も汚れてるし』 教育学部ではない三条の教育実習は三回生になってから。 とはいえ、教諭志望の実践実習。 吸収出来る事はどんなに小さな事でもし、己れのものにする。 勿論、目の前の教師からもどんどん吸い取るつもりだ。 『知ってる先生方が沢山いらっしゃると良いな』 「はい。 でも、卒業して3年ならいらっしゃいますよね」 『相川先生はいるな。 たまに連絡とってんだよ。 あと、亀田先生はいらっしゃるだろ』 「そっか。 亀田先生。 担当だと良いです。 でも、1番教えて貰いたいのは長岡先生です。 俺の目標ですから」 『なんでも教えてやるよ。 授業でも雑務でも、それ以外でも』 「それ以外、ですか…?」 『そう。 それ以外』 「もう沢山教えられてるのにですか?」 『そりゃ、成人するまで待ってたプレイとかあるしな』 もうプレイと言ってしまっている。 顔も笑っているし。 けれど、そんな淫らことが出来るようになるまであとどれほどの時間が必要なのだろうか。 少しの不安と、期待。 早くそうなって欲しいと願う。

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