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第190話

「本日から3週間お世話になります。 三条遥登です。 沢山ご迷惑をおかけすると思いますが、ご指導ご鞭撻よろしくお願い致します」 深く頭を下げると、拍手が降ってくる。 「此方こそ、よろしくお願いします。 三条先生」 へちゃ、っとマスクの奥で笑うと亀田は座るように進めた。 6月下旬。 教育実習がはじまった。 真新しいスーツ。 これまた新しく用意したスニーカーを履いて歩くのは、見知った校舎。 知っているはずなのに、どこか違って見えるのは生徒のせいか。 それとも立場が違うからか。 なんとも不思議な感覚に襲われる。 「おかえなさいと言った方が良いですか? 立派な大人の顔になりましたね」 他の教諭も、卒業生の顔に嬉しそうな顔を見せてくれる。 沢山の迷惑をかけ、沢山の時間を奪ってしまうのにそんな顔は見せない。 「机はここを使ってください。 それから、校内は分かりますよね。 あ、トイレはなるべく職員用をお願いします」 「はい」 「それから分からないことや知りたいことがあればどんどん話し掛けてください」 「はい。 ありがとうございます」 朝礼を済ませ、今度は集会で挨拶。 目まぐるしく過ぎる時間に、三条は必死で食らい付いた。

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