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第192話
教育実習生というだけで視線が集まる。
背丈や細さのせいではなく、単純な好奇心の目だ。
少し緊張して暑くなってくる。
「さ、どうぞ」
「失礼します」
生物室はなんだか幾分か涼しい気がした。
在学中もそう思っていたが、いまだに不思議だ。
なんでこんなに違うのだろう。
グラウンドに面した窓を全開だからだろうか。
風が通れば涼しい…にしては、空気が冷たい気がする。
「生物室でも良いですけど、お茶を用意するので準備室で食べませんか?
殆ど人も来ませんし、気兼ねなくしてください」
「そんな、俺は隅で大丈夫です」
「僕とじゃ…嫌、ですか…」
「そんな…っ。
嫌なんてことはまったくないです。
けど、お邪魔にならないか心配で…」
相川はその言葉を聞き、目を細めた。
そして、俯く三条の視界に顔が映るように僅かばかり屈んでみせる。
すると、三条の目が再度真っ直ぐ相川を捉えた。
「長岡先生にも、お願いされているんです。
三条くんが行くから見守っていて欲しいと」
聞き馴染んだ名前に顔を上げた。
「先生が…」
「はい。
教師になりたい子がいて、きっと実習で戻ってくるからと離任式の後にお願いされたんです。
自分は移動してしまうから、と。
この前も連絡が来たんですけど、とても心配されてました。
こんなタイミングだから心を磨り減らすかもしれないと、すごく気にされてて。
三条くんは、沢山の人に甘えて良いんですよ。
それを僕達に望まれているんですから」
長岡がそんなことをしてくれていたなんて知らなかった。
先日のセックスも激しくストレスまで吹き飛ぶようなもの。
きっと実習で会えなくなると分かっていたから。
いつも愛されていると感じていたが、その大きさに驚くばかりだ。
会いたい。
一目で良い。
恋しくなってしまった。
三条はぎゅっとネクタイピンを握り締める。
「さ、ご飯にしましょうか」
「はい」
「僕も、三条くんとお昼が食べられて嬉しいです」
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