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第195話
冷蔵庫で取り出されたペットボトルの麦茶がトクトクと注がれる。
そこに氷まで入れてもらい、感謝しかない。
6月末はもう夏だ。
スーツが暑い。
ジャケットを脱いでも良いとは言われたが、教えて貰う立場なので、なるべくキチンとした姿格好でいたい。
それに、細身を隠すにはジャケットは好都合だ。
とはいえ30度近い気温に汗が滲む。
そんな時に冷たい飲み物がいただけるなんて。
水筒も持ってきてはいるが、とにかく有り難い。
「どうぞ。
麦茶です」
「ありがとうございます」
「そんな立ってなくて良いですよ。
腰掛けてください。
僕しかいませんから、そんなに畏まらないでくださいね」
「はい」
相川は自身のカップに同じ物を注ぎ、事務椅子に腰掛けた。
それから三条が腰を下ろす。
すっかり頭がそちらのモードになってしまっている。
これがスイッチか。
言われてみれば、自身もスーツ姿の恋人を正宗さんと名前では呼ばない。
無意識の内に頭が切り替わっていたらしい。
「いただきます」
有り難く飲ませてもらうと、喉と食道がスッと冷えた。
美味しい。
それに、有り難い冷たさだ。
ゴクゴクと喉を鳴らしてしまいそう。
「美味しいです」
「良かったです。
いつでも飲みに来てください。
1人なので、三条くんが来てくれると嬉しいです」
少しだけホッとした。
ここには、相川しかいない。
それだけで、少し楽。
他の人の目がない。
「お昼も食べましょうね」
「はい。
いただきます」
いつものように手を合わせ、感謝する。
作ってくれた母親にもだ。
蓋を開けると、好きおかずばかりが所畝ましと詰まっていた。
野菜の肉巻きを頬張ると、甘辛い味付けに優しいの甘味がたまらなく食欲を刺激する。
なんだか元気になってくる。
そして、とても美味しい。
現金で本当に良かった。
そう思う。
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